大阪大学大学院文学研究科博士後期課程3年
松本 渚さん インタビュー
臨床哲学 ⇔ プロジェクトマネジメント
「社会課題」と括ることで「こぼれ落ちる」ものを追いかける
「社会課題」と括ることで「こぼれ落ちる」ものを追いかける
- 学部生の時は、広島で被爆者の「語り」を残すための対話イベントを定期開催
- 「訪問術」の授業をきっかけに、釜ヶ崎に通うように
- NYのボールルームカルチャーをヒントにプロジェクトを企画実施
- 学んだのは「困難な状況を生き延びる術を教わり共に考える」態度の重要性
松本 渚
大学院等高度副プログラム「社会の臨床」修了
大阪大学大学院文学研究科博士後期課程3年
学部の時は、実際に対話イベントも企画しながら、広島で被爆者の語りを残していくことについて考えていました。その後、実践からもう一歩進めて研究の道に進もうと、大阪大学の大学院に進みました。
被爆者の方と話していると、恋愛や子育ての話も出てきます。あたり前かもしれませんが、彼らが被爆者としてだけ生きているのではないということに気づきました。その頃は被爆者として研究対象にしてしまうのではない形で、どうやったら探究できるのかを悩んでいました。
そんな中で受講した「社会の臨床」プログラムでは、新しい「態度」みたいなものを得ました。あえて言えば「社会的排除によって、マイノリティの境遇に立たされるあるひとの状況を、広く"社会課題"としてだけで捉えない」ということでしょうか。社会課題ありきで状況を見てしまうと、「分かりやすいストーリー」に落とし込まれる危険性がある。むしろ、課題となる状況を生きている人と出会い、この社会がどう見えるのか、生き延びる術を教わり、一緒に考えていく態度が大事なんだ、と。
講義では、受講者間での学びも大きかったです。看護や福祉や教育の専門職として現場で働く人も多かったので、「ケア」や「エンバワーメントを促す関わり」があるということ、それを踏まえて、困難な状況を生きる人のそばにいるという仕方を学びました。
学びの集大成として、2021年3月にイペント「カマは燃えている:ココ〈ボール〉ルームでなりたい自分になる」を主催しました。『カマボール』でも、釜ヶ崎にあるさまざま なつながりの湯に集うひとたちと交流を深めつつ、丁寧にお話を聞き、「なりたい自分」を実現する、ということを企画の中心に置きました。当日のパフォーマンスは、それぞれのコミュニティの仲間たちが見守って、祝福していました。この取り組みに関する共著論文も投稿中です。これからも、毎日ひとりひとりとの関わりを積み重ね、対話と実践を続けていきたいと思っています。